これまでの社会では、「マタニティマーク」や「ヘルプマーク」のように、いわゆる「当事者」のカミングアウトを求める動きが中心的でした。
これらは大変有用な取組みですが、一方で、自分の状況を表明したくない方たちがいること、自分が協力する側として行動するとき、恥ずかしくて声をかける勇気がでないといった課題があります。

更に、私たちは、国籍や障害、ジェンダーや年齢で状況を推測しやすいところがあります。
青い目の方が困っていたら「英語で話しかけないといけない」と思いがちだったり、白い杖を使っている方が困っていたら視力に関する支援を必要としていると想定しがちだったりします。
しかし実際は、日本語がぺらぺらの青い目の方もたくさんいらっしゃるし、その白い杖を使っている方は、単にトイレの場所を聞きたいだけかもしれません。

そして、このような分野をめぐっては、特に若者を中心として、「社会貢献やチャリティー=特別な人々がやること」といった考えや、「そもそも関心がない」という人たち、もしくは、「良いことはしたいけど気恥ずかしい」という人も多くいます。

 

そこでEMPOWER Projectでは、当事者ではなく、協力者サイドが「よければ協力します!」とカミングアウトをすることを提案しています。

 

これにより、当事者のカミングアウトは必須ではなくなり、精神障害や知的障害などの見えにくい障害のある方や、自分の状況を表明したくない方にとって、有用です。また、協力したいけれど、声を出す勇気がでないといった方にも、当事者サイドから声をかけてもらえる可能性が高まるため、安心です。

そして、属性ではなく、ニーズに目を向けるという点でも画期的です。
私達が普段困った時、多くの場合、年齢や国籍や障害の詳細は全く必要ありません。
そして、障害の有無や年齢に関わらず、また、日本語の上手下手に関わらず、体調が悪いときや知らない町に出かけた時には、誰でも当事者になりえます。
同じように、障害の有無や年齢に関わらず、日本語の上手下手に関わらず、協力者になれるのです。逆に、障害があったり、海外で暮らした経験があるからこそ、より有用な協力ができるといったこともありえます。

これらの考え方によって、福祉のイメージとは一線を画し、そして、若者でも身につけやすいマークを使うことで、「カッコいいこと」として、若者をはじめとする多くの方に、EMPOWER Projectの考え・行動を普及させていくことができ、「普通のこと」として、文化の一部にしていけるのではないかと考えています。